森の中をしばらく進むと、ほのかにたき火の明かりらしい物が見えてきました。
シオン姫は白馬に乗ったまま、そっとその光の方へ進んで行きました。
そこは小さな広場みたいに開けた所でした。ちょうど真ん中に小さなたき火がありました。

「お兄ちゃん、おなかすいたよ」
女の子は、今にも泣き出しそうな声で言いました。
「我慢するしかないんだ、食べるものはもう何もないのだから。


でも、あともう少しで夜が明けるよ。お日さまが昇ってすっかり明るくなれば、この森を抜けられるよ」
とうとう泣きだしてしまった小さな妹の頭を撫でながら少年は言いました。

「どうしたの?」
シオン姫は、ふたりを驚かさないように白馬から下り、ゆっくりと近づいて行きました。

「あなたはだれ?」
少年はぎゅっと妹の手を握りしめて言いました。


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