「私は息子が泣くのを久しぶりに見ました。今までは我慢してたのでしょうか。あの子は妹が産まれてから、あんなふうに泣いたことはなかったものですから」 「お父さまを見て安心したのですね」
ドアの隙間から見える幼い兄妹の寝顔を見ながら、シオン姫は言いました。「…それでは私はこれで失礼します。どうかお大事に…」

「本当にありがとうございました。あなたのお探ししているものが早く見つかりますように!」


兄妹の父親と握手をしてから、シオン姫は宿屋の外に出ました。
ふと二階を見上げると、窓から背の高い医者が、身を乗り出して手を振りながら言いました。
「もう、大丈夫です!ゆっくり静養しなければならないけれど、もう大丈夫です!」
シオン姫は安心して微笑むと二階に向かって手を振りました。
「先生、お元気で!」

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