それを聞いて背の高い医者は「大丈夫、お金のことなんて心配いらないよ。それに、あのお屋敷で私は医者としてやれることはきちんとやってきたよ。熱はなかったからね。昨日の夜には帰ろうと思っていたのに、大げさに苦しむ真似をするんだ。あのお屋敷の子供は、彼の母親に付きっ切りでやさしく看病してもらいたかっただけなんだよ」
男の子は、自分が風邪をひいて熱を出したとき、やさしく看病してくれた母親のことを思い出し、涙が溢れてきました。 「さぁ、急いで行くぞ!」

そう言って背の高い医者は、シオン姫の乗った白馬の後を遅れないように速足で走り続けました。
幼い兄妹が長い時間をかけて歩いた道をあっと言う間に馬車は駆け抜けてゆきました。
森を抜けて南の町の診療所に着くと、兄妹の両親がいる宿屋に走ってゆきました。宿屋の前には彼らの父親が兄妹を探しに出掛けようとしているところでした。
「お父さん!お医者さまをつれてきたの!」
女の子が叫びました。

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