そのお城のなかでは、薄紫のドレスを着たご夫人がなにか大声で叫んでいるようです。
「シオン様、サン王国よりお手紙が届いておりますよ!」薄紫のドレスのご夫人―レイク夫人は塔に続く細いらせん階段を息をきらせながらぐるぐると駆け上がっていきました。

お城の塔の一番上の部屋は美しい海が遠くまで見渡せました。右を見ればサン王国の美しい森が見えます。
「なんてきれいな海。なんて美しい緑…。」塔の一番上にある小さな部屋


の、南側の大きな窓の外に広がる美しい風景に、気持ちが溶け込んでしまいそうになった時、ドアを開ける大きな音がしました。

「シ、シオン様、お、お手紙ですよ」そういうとレイク夫人はすぐ横のソファにへなへなと座り込んでしまいました。

「しかしまぁ…、こんな高い塔にのぼるのは、まったく私には大変なことですよ」と言いながら薄桃色の紙に包まれた手紙を、シオン姫に差し出しました。


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