「ワンワン!」遠くの方で真っ白な犬が羊飼いを呼んでいます。
羊飼いはぴょん、と飛び起きて「おや、もうそんな時間か!」と眩しそうに西の方を見つめました。
そしてシオン姫の方を振り返ると「ごゆっくり!」と言って羊の群れの方に走って行きました。
「ありがとう!またお会いしましょう!」シオン姫は、あっという間に遠くの方まで行ってしまった羊飼いに向かって叫びました。
羊飼いは、傾いてきた太陽の光を浴びながら、

力いっぱい手を振りかえしていました。
羊飼いと羊達の群れが夕日の中に溶け込んで見えなくなるまで、シオン姫は草原の中に立っていました。

「ほんの一瞬だったけれど、とても不思議な感じだったわ!草原の中に溶け込んでゆくような、そう、まるで草原の海を自由に泳ぐ小さな魚になったみたい…」
シオン姫は、一面オレンジ色に染まる草原に沈んでゆく太陽を、じっと見つめていました。


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